前回、住み継がれる家の条件として、高い性能とメンテナンスのしやすさについてお話ししました。今回は、長く愛される家に欠かせないデザインの視点と、住まいを次世代へ継承することの意味について考えていきたいと思います。
長く愛される家に欠かせない要素。それは、シンプルなデザインです。
流行に左右されない美しさを持つ住まいは、何十年経っても古さを感じさせません。無垢の木や漆喰などの自然素材を使った内装や造作家具・建具は、10年、20年たっても古びることなく、上質な印象を保ってくれます。
つかした建築では、”引き算の美学”を大切にしています。余計なものを削ぎ落とし、必要なものだけで構成された空間。そこには、長浜に残る古い町家の佇まいにも通じる、時を超えた美しさがあります。
一過性の流行ではなく、本質的な美しさと機能を兼ね備えた住まいこそが、世代を超えて受け継がれていく。「今だけ」ではなく「これから先」を見据えたデザインが、結果として長く愛される住まいを生み出すのではないでしょうか。
住宅が空き家になる背景には、”次の世代が住みたいと思える家でなかった”ことも大きく関係しています。建物のメンテナンスが不十分で老朽化が著しいのもそうですが、ほかにも間取りが極端に閉鎖的だったり、使い勝手が悪かったりすると、引き継ぐことをためらってしまうもの。
家族構成の変化に対応できる柔軟性を持った間取りは、次の世代にとっても魅力的です。壁を取り払って大きな空間にしたり、逆に仕切って個室を増やしたりできる可変性を持たせることで、時代の変化にも対応できる住まいになります。
長浜市でも、空き家バンク制度や空き家活用に関する支援制度が少しずつ整いつつあります。しかし、”建てた家が空き家にならない”ことが何よりの空き家対策であることは言うまでもありません。
だからこそ、家づくりの段階で”将来どう住み継ぐか”という視点を持つことが大切なのです。性能・素材・デザイン・間取り、それぞれが未来の住まい手を意識したものであるかどうか。それを考えることが、今後ますます重要になっていくでしょう。
建物が古くなることは避けられませんが、それと住まいの価値は必ずしも比例しません。むしろ、時を経るほどに深まる価値もあります。樹齢を重ねた庭の木々、艶を増した無垢の床、グレーに色を変えた板張りの外壁。
そうした時間の痕跡が、私たちの未来をより豊かにしてくれます。
季節のうつろいと共に過ごす日々。そのひとつひとつが、やがて次の世代にとっての『思い出』になり、『資産』になっていく。そんな家を、私たちは長浜で、丁寧につくり続けています。