日々忙しく過ごす現代人にとって、家族と過ごす時間はとても貴重なものです。
それもあって、住まいにも家族の気配を身近に感じられるような配慮や工夫が多く求められてきました。
家族が顔を合わせやすい『リビング階段』はその最たる例で、依然として人気の『平屋』もワンフロアで生活できる点が「コミュニケーションをとりやすい」と好まれています。
スタディースペースを取り入れる家が増え、リビングやダイニングで子どもが宿題をするスタイルも、今ではすっかり一般的に。コロナ禍を機にリモートワークが普及したことで、スタディースペースはご夫婦のワークスペースとしても使われるようになりました。
そのようにして、くつろぎの場であるリビングは自然と家族が集まるように計画されてきたのです。
それにともない、夫婦の寝室や子ども部屋は“寝るだけの部屋”として最小限に計画されるケースが増えていきました。
家族のコミュニケーションが重視される一方で、『個』の時間がなおざりになっていたようにも思います。
しかし、今後は本来の形を取り戻し、再び個の空間の重要性が見直されていくのではないかと考えています。家族の共有スペースのあり方はそのままに、個の空間を充実させる方向へと進んでゆくのではないかと。
家族との時間はもちろん大切ですが、子どもが大きくなるにつれて個室の重要性というのを感じる場面も少なからず出てくるからです。
子どもが大きくなれば、自宅に友だちを呼ぶ機会も増えるでしょう。
小学生のうちはリビングでゲームもいいかもしれませんが、中学生や高校生になれば親の目を気にして自室にこもるようになるでしょうし、いつまでもリビングにいられては親の方が気をつかうかもしれません。
そうなると、子ども部屋も寝るだけの部屋ではなく、ローテーブルとクッションを置けるくらいのゆとりはもたせてあげたいところです。
もちろん、予算のあることですから、何かを足せば何かを削らざるを得ないこともあると思います。
将来を見据えて取捨選択しながら、家族との時間も自分の時間も、どちらも尊重したプランを一緒に考えていきましょう。