黒壁スクエアに代表するように、長浜の街並みには時代を超えた魅力が詰まっています。
築40年、50年といえば、戦後のプレハブ住宅や在来木造が一般化された頃の住宅ですが、長浜ではその時代にも伝統工法で建てられた家が多く、それが今も数多く残っています。
漆喰、無垢材、ガルバの外壁で和モダンに仕上げた新庄中町の家も、そんな時代に建てられた民家の一軒でした。
昭和後期の家とはいえ、伝統工法で建てられた家なので、ただのリノベーションというよりは古民家改修に近いものがありました。
在来工法とは構造自体が違うので、現行の耐震基準に合わせるのは容易ではないものの、できる限りの耐震補強は行う必要があります。腐朽した構造材を新しいものに交換し、強度の足りない部分は既存の梁に抱き合わせで梁をもう一本追加する。そんなふうに、必要に応じて強度を補っていきます。
玄関は元の雰囲気を大切に、和のイメージを残してデザインしました。
一方で、かつては田の字の和室があった、この家でもっとも日当たりと風通しのよい場所を、広々としたLDKに刷新。造作カウンターのあるカフェのような住まいに、変貌を遂げました。
2階の子ども部屋は、特徴的な梁をあえて見せ、新たにロフトを新設。
いちばん大きな梁を境に、ふたつの子ども部屋のロフト部分を仕切るという、遊び心のある空間に。
この家の面白いところは、1階は重要な柱だけで支えているため、間取りを変える際にも「柱を抜けない」などの制限がありましたが、2階は丸太組で柱がほとんどないという点。だから、自由に間取りを変えられる。
現代建築でいう、スケルトン・インフィルのような構造ですね。
スケルトン・インフィルとは何なのか?
https://tsukashita-kenchiku.com/all/948/
性能面でいうと、リノベーションで新築のような気密性を得るのは難しいといわれています。
実際、新築と同程度の気密を確保するのは困難ですが、それでも断熱材の充填や窓の改修を丁寧に行うことで、一般的に高気密といわれるだけの気密性は確保できました。
このように、古い家のよさを活かしながら、現代の暮らしに合わせた改修を行う。
伝統的な技術と現代の知識を組み合わせることで、より快適で安全な住まいを実現できると考えています。
皆さんも古い家を壊してしまう前に、まずは再利用の可能性を探ってみてください。思いがけない発見や、新しい暮らし方が見つかるかもしれません。
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