被災地の皆さんは、大変な冬を過ごされていることと思います。
建築基準法制定のきっかけとなった福井地震を始まりに、これまで国内で大地震が起きるたびに建物の耐震性が見直され、現代の住宅の安全性は大幅に向上しています。
能登半島地震においても、2000年以降の木造建築物の倒壊は4棟(全体の0.7%)のみ。そのうち2棟は倒壊の原因を確認できましたが、いずれも耐力壁の量や配置に問題があるなど、基準法の規定を満たしていないことが理由でした。
つまり、現行の耐震基準である新耐震基準・2000年基準をしっかりと満たした建物であれば、倒壊を防げる確率はかなり高いということ。
新耐震基準というのは、1978年の宮城県沖地震を受けて改正された建築基準法による耐震基準のことで、1981年6月1日以降に建てたものは新耐震基準に適合しています。
2000年基準は、1995年の阪神淡路大震災を機に、木造住宅の設計に対して加えられた変更で、2000年6月1日以降に建てた木造戸建てに関しては、この2000年基準を満たしているということになります。
しかし、耐震基準というのは、あくまでも一時的な安全を保証するもの。倒壊はしていないものの、目に見えて破損している建物、見えない部分に損傷を受けた建物というのは、かなりの数に上るはずです。なかには、どうにか持ちこたえている建物もあるかもしれません。
令和6年の元旦に起きた地震のあとも、能登では何度も地震が起きています。今後、いつまで持ちこたえられるのか。このまま、この家に住み続けられるのかと不安を感じている方も少なくないでしょう。
現行の耐震基準が地震による倒壊の抑制につながっていることを承知のうえで、それでも私たちが耐震等級3を標準化するのは、「一時的ではない」「長い目で見た安心」が必要だと考えるからです。
余震が続いても、再び大きな地震が起きても耐えうる家。損傷をできるだけ少なく抑え、被災したあとでも長く住める家。
そうした家にするためには現行の耐震基準に沿っただけの家(耐震等級1)ではダメで、やはり耐震等級3が必要だと思うのです。
もちろん、ただ耐震等級3を満たしていればよいというわけではなく、そこには正しい設計・施工というものが必須となりますが、まずは耐震等級3を目標に。耐震等級3を満たしたうえで、じゃあ次は、どんな間取りにしようか、外観はどうしようかという流れが、今後の家づくりの標準となるべきだと考えています。
能登半島地震から1年がたった今、改めて少しでも多くの方に住宅における耐震の重要性を知っていただければ幸いです。
>>「被災地・能登を訪ねて」