近年、暮らしの価値観が大きく変わりつつあります。家具や衣類、日用品においても、使い捨てよりも質の良いものを手入れしながら長く使いたいという”本物志向”が広がっています。SNSでは「一生もの」のアイテムが話題になり、修理やリメイクを楽しむ文化も定着してきました。
そして、住まいにおいても同じ傾向が見られるようになりました。
これまで日本では、住宅は”30年くらい住んだら建て替えるもの”とされてきましたが、空き家問題が深刻化し、その対策が進められる中で、”長く住める家”や”将来世代に引き継げる家”への関心が高まっています。
2024年4月の相続登記義務化により、空き家の実態がより明らかになったことで、住まいのあり方を見直す動きが広がっています。
国土交通省の調査によると、全国の空き家は20年で約1.5倍に増加。長浜市に関していえば、滋賀県内でも空き家率が高く、親世代の家が空き家になるケースが増えています。歴史的な町並みが残る地域だけに、空き家の活用と保全は大きな課題となっています。
それらの課題に直面して初めて、家づくりにおいて大切なのは”時を経ても価値が続くこと”であると気付いた人も多いでしょう。
では、“価値が続く家”とは、どのような家なのでしょうか。
まず考えられるのが、性能の高さです。
耐震性は住まいの安全を守る最も基本的な性能。近年の地震対策技術は格段に進歩し、適切な構造計画と施工によって、長期にわたり安心して暮らせる住まいを実現できるようになりました。
耐久性も重要です。湿気対策やシロアリ対策、基本的な施工品質など、建物の寿命を左右する要素に配慮することで、何十年、何世代にも渡って住み継げる住まいになります。
また、断熱性や気密性の高い家は、夏も冬も快適に過ごすことができ、年齢を重ねても安心して暮らせます。省エネ性能に優れた家は、家計にも地球にもやさしい。長浜のように寒暖差のある地域では、性能の差が暮らしの質に直結します。琵琶湖からの湿気対策や、冬の北風を考慮した住まいづくりも、長く住み続けるための重要な要素です。
性能の高さは、住宅の資産価値にも影響します。築年数ではなく”どんな性能を備えているか”で評価される時代。将来売却することになったとしても、しっかりとした性能があれば”住みたい”と思ってもらえる家になるでしょう。
欧米のように、高性能な住宅は築年数に関わらず価値を維持できる時代が、日本でも少しずつ訪れています。
長く住み続けるうえでは、メンテナンスのしやすさも重要です。つかした建築では、木や漆喰などの自然素材で内外装を仕上げています。自然素材は適切な手入れをすれば、時を経るほどに美しさと味わいが深まり、小さなキズや色の変化も、暮らしの歴史を刻む風合いに――。
空き家問題が教えてくれるのは、”短期的な利便性”よりも”長期的な価値”を大切にすることの重要性なのかもしれません。