今でこそ『自社大工』を強みに工務店経営などしていますが、私はもともと信念があって大工になったわけでも、ものづくりに興味があったわけでもありません。
中学校を卒業したあと、すぐ。両親にすすめられるまま、父の大工仕事を手伝うかたわら夜間学校へ通うという、二重生活が始まりました。
ですから、私の場合「父の背中を見て育った」というよりも、気付いたら目の前に父の背中があったという方が正しいかもしれません。
父のもとで修行を始めて最初の1〜2年は、ただ言われたことをこなすだけの日々でした。
それでも、2年を過ぎた頃からできることも増えてゆき、少しずつものをつくる楽しさを感じられるように。
高校在学中から8年にわたり父親のもとで修行をしたのち、私は長浜市内のリフォーム会社に大工として就職します。
しかし、時代は変革期。
膨大なリフォーム需要のなか、“お客さまに寄り添う”ことよりも“ひらすら数をこなす”仕事のあり方に疑問を抱き始めます。
なんとなく始めた大工という仕事でしたが、父親のもとで修行を重ねていくうちに、いつしか自分なりの想いが芽生えていたのでしょう。
その後リフォーム会社を退職し、独立。
しかし、下請け仕事も社員大工の仕事とさほど変わりはありません。
悶々としながらも、「経験も実績もない自分が元請けとなって家を建てることができるのか」と、下請けから一歩踏み出せずにいる状況がしばらく続きます。
大きなターニングポイントとなったのは、親戚から「家を建てたい」と相談を受けたこと。
「子どもが喘息で」という話を聞き、喘息と住まいの関係について調べ、自然素材がよいと知りました。
それを機に自然素材を使った家づくりに関心を持ちはじめ、下請け大工を脱却。工務店として独自のブランドを持ち、今のスタイルを確立するに至ります。
世の中は、日々目まぐるしく変化しています。
気候の変動。
生活様式の変化。
建築技術の進化。
変化を続けるなかで、住む人がいつでも快適だと感じられる家を建てるためには、絶えず勉強し続けなければなりません。
お客さまのために、つかした建築はこれからも勉強し続ける工務店でありたいと思います。