元日に発生した、令和6年能登半島地震。
被災地では現在、がれきの撤去やライフラインの復旧、仮設住宅の建設が進められており、被災者の方々はいまだ不自由な生活を余儀なくされています。
被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興をお祈りいたします。
震源地に近い地域では、多くの家屋が倒壊しました。
地震の脅威を前に、私たち工務店が建築従事者としてできることは何なのでしょうか。
それは、住まいの耐震性能を高めること。
耐震性の高い建物と聞いて、皆さんはどういう建物を想像しますか?
梁や柱を大きくした建物。筋かいという斜めの補強が入った壁(耐震壁)を、できるだけ多くした建物。これが、一般的な構造の考え方ではないでしょうか。
実際私も、今まではそういうものだと思っていました。
通常、家を設計するときには、まず間取りや外観をデザインします。これを、意匠設計といいます。
次に、雪や台風・地震に耐えられるよう、構造部の設計を行います。
ここで耐震性が足りないと判断されれば、部材を大きくする、補強を増やすなどして、必要な性能を確保します。
このとき、どうしても『間取り』や『空間構成』に制約が出てきます。
「ここの柱がじゃま」「この壁がなければ…」というように、耐震性を上げることで出てくる不満もあるでしょう。
なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。
それは、プランニングの時点で設計者が構造のことを考えていないから。
だから、プランが確定してから無理に強度を補うことになってしまうのです。
ある意味、力技ともいえますね。
このような不満を生まないためにも、大切なのは「意匠設計の段階から構造を意識しておく」こと。
具体的には『構造区画』を基本としてプランニングすることです。
構造区画とは、四隅の柱と土台や梁などの横架材で囲まれたボックス状の区画のこと。
このボックスを縦に、横につなぎ合わせて間取りをつくっていくのですが、必要に応じて1階部分に柱を足すなどルールに従って設計することで、直下率を100%まで上げることができます。
『直下率』とは、1階と2階で耐力壁が同じ位置にある割合のことをいいますが、2016年4月に起きた熊本地震で「震度7の地震にも十分耐えられる」といわれていた耐震等級2の住宅が倒壊したのは、この直下率不足も原因のひとつだったという調査結果が出ています。
構造がシンプルであるほど、強度は高くなります。
つまり、意匠設計者がこの『構造区画』という考え方を頭に入れて設計することで、ただ自由度が高いだけでなく、よりシンプルで美しい空間をつくり出すことができるということでもあります。
つかした建築ではこれまで、気密性や断熱性の向上には誇りを持って取り組んできましたが、今後は“地震大国、日本”に見合った耐震性も備えるべく、全棟『構造区画』による耐震等級3を標準としていけるよう、さらなる知識と経験を積み重ねてまいります。