先月24日、M’s構造設計の皆さんとともに、震災のあった能登半島の視察に行ってきました。
路上のがれきは敷地の方へ寄せられていたものの、液状化の影響で陥没した道路は、震災から7か月が経過する今も復旧せず。
火事で焼けた跡は撤去されていましたが、解体業者が入れないためほとんどがそのまま残されています。
倒壊した家々。倒れていない家にも、その多くに危険を喚起する赤紙や要注意の黄色の紙が貼られています。横倒しになったビルも、手つかずのまま。
建物というのは、どこまでも自己責任。建てるときも自己責任なら、倒壊して手に負えない状況になっても自己責任が求められるのだと、改めて感じさせられました。
倒壊しているのは、必ずしも古い家ばかりではありません。「なぜこんな家が?」と思うような築年数の新しい家が倒れていたり、同じ時期に建ったと思われる家でも倒れたものと生き残ったものがあったり、さまざまな現実を目の当たりにしました。
もちろん、家が生き残ったからといって、この先も住み続けられるかどうかもわかりませんが……。
被災地の視察には、構造技術者が耐震に関する知見を深め、実務へとつなげることで日本の住宅の耐震性能を底上げしていく目的があります。
そして、構造技術者以外の建築実務者も、リアルな被災地の状況を目の当たりにすることで、住宅における耐震性の重要性をより深く理解し、設計・施工それぞれの立場から自分にできることを考えます。
もうひとつ、私が今回もっとも強く感じたのが、町並み保存について。
長浜市では『黒壁スクエア』という観光スポットを中心とした伝統的な町並みや建造物の保存・活用に、積極的に取り組んでいます。
しかし、保存・活用のために建造物を改修する際のルールのなかに、耐震補強に関する項目がありません。
今回の被災地視察で輪島を訪れた際、その古い歴史を持つ漁業の町に、長浜と通じるものを感じました。
いくら伝統的な町並みを残そうとしたところで、耐震補強を義務付けなければ、万が一のときには歴史的な建物も町並みも守ることができません。
歴史ある長浜の町を守るためにも、町並み保存のルールを見直すときが来ているのではないでしょうか?